「たばこを売る会社って、本当に必要?」自社の存在意味すらも疑った、2兆円メーカーの史上最難関インターン実録。

自分の会社の「存在意味」を疑う会社

「うちの会社は、Speculative(思索的な) Company(会社)なんですよ」

そう語り始めたのは、落ち着いた雰囲気の、インターンでメンターをしている女性だ。

「企業として何者であり続けるのかを問うっていうのもそうだし、たばこ会社であるからこそ、何を中心的な価値に据えて活動していくのかを問い続けねばならない組織であると思う。」

 

そんな、「自らの存在意義すらも問う」姿勢を貫く、日本一のたばこ会社「JT」。

国内のみならず世界中で事業を展開する、日本を代表する会社だ。

そんな彼らがこの冬の学生向けインターンシップ。そこで出したお題は、世の中に大きな衝撃を与えた。

 

「The World without JT ~JTが存在しない世界は、どのようなものなのか~」

 

従来のあらゆる企業のインターンシップは、「その企業が必要とされていることを前提とする世界観」の中で行われるものだった。

しかし、今回JTの出したお題は、その真逆。

 

「JTが存在しない世界は、どのようなものなのか」

 

「それを考えた上で、JTが世の中に必要とされているか、必要とされていないかを、一緒に考えてもらいたい」

 

それがJTから学生へのメッセージだ。

 

社内でも、物議を醸したインターンシップ。

 

「社内が、ざわつきましたよね。この方針でインターンをやると発表したときは。」

 

そう口を開いたのは、体格の良いラガーマン風の、新卒採用責任者の男性だ。


今回のインターンを主導する1人である人事部の嚴宗博氏

「こういう、「その会社が本当に必要とされているかを問う」というインターンシップが必要であることは明確に信じている。」

「しかし、たばこ会社である自分たちが、それをやっていいのか。参加する学生に業を背負わせていまうことにならないか、そこに一抹の不安があることは否めません。」

「それでも。JTに入る入らないに関係なく、インターンに参加してれくた学生が、これから人生を歩むときに、今回のインターンを通して得た考え方を使って、将来の選択肢を考えてくれることに、大きな希望をもっています。そして何よりそんな彼らから出てきたアウトプットがどんなものか、とても楽しみですね。」

 

いきなり、相模湖で人類の未来を考える

 

インターンシップ初日。参加者が集ったのは、神奈川県相模湖。


参加者とメンターがたばこを片手に語り合う

ここで参加者達は壮絶な体験をすることになる。

「過去の様々な文脈の対立、テクノロジーの進化、資本主義の限界、個人のライフスタイルの変化、人類のこれから、そしてそれらにまつわる理論、そういう今まで考えてこなかった超大局的な視点を、ひたすらインプットした。マジで頭がパンクしそう。」

「大きな会社を経営するってここまで考えるのか、本当にびっくりした。東大でも、こういうのをしっかりと議論したり話したりする機会は全然無い。初めての経験。」

参加者が口々にそう振り返るインプットは、JT経営企画トップの大瀧氏によって行われた。

 

壮大なスケールのインプットと同時に、参加者同士やメンターとの親睦を深める機会が用意された。料理をともにし、焚火を囲み、語り合う。チームの輪も、徐々に固まりつつあった。

たばことは何か。時間とは何か。JTとは何か。

 

後半戦は、虎ノ門のJT本社で進む。


参加者たちは「答えの無い問い」に対して悪戦苦闘をしていた

その傍ら、一人の男性JT社員に話を聞くことができた。

 

「過去は無数にあって、未来は無数にある。そのなかで自らの意思って結構大事で。ありえた過去、ありえた未来を想うことで、JTの意思を見出していきたかった。単純に「未来をつくろう!」みたいなのは、もうしんどいんですよね。」

 

そう話をしてくれたのは、昨年新卒で東大からJTに入社した人事部の男性だ。

新卒1年目、人事部の某氏(メディア掲載NGのため写真に処理を施しております)

 

「このインターンをつくるために、たばこの歴史を100年ほど掘ったんですよ。そうしたら色んな人の色んな思惑がでてきて。そういうのが重なって現実っていうものが、一瞬ごとに確定していくことがわかるんですよ。無限の可能性があった未来が、一瞬ごとに現実になっていくわけじゃないですか。これって、一人の意思じゃ無理で、でも一人の意思が必要で。そういうせめぎあいがすっごくダイナミックなんですよ。これをぜひ、このインターンで共有したかった。問いを共有することで、入社するしない関係なしに仲間をつくりたかった。

 

「社内を放っておくと、「たばこってこういう価値があるよね」、みたいな今までの感覚にとらわれる。そうじゃなくて、自分たちも答えの無い問いに対して誠実に向き合う。ちゃんと、味わう。このインターンは、今までの「経営戦略を出せ!」みたいなアウトプットがイメージできるものじゃないので、僕らも本当に本気でこのインターンに向き合っている。こういう時間って、すごくいいなあ、って。」

 

「ぜひ皆に、世界を味わう訓練をしてほしい。それは、参加者にも、社内にも。」

 

最終発表。でもインターンは終わらない。

 

最終発表。

参加者たちは、自分たちの考えた「JTの存在意味の是非と15年後の未来」をJT経営幹部にプレゼンをする。

どのチームも、必死で6日間考え、出したアウトプット。そのプレゼンを受け、司会を務めていた女性は、こう語った。

「今回のインターンを通じて、学生さんの皆さんの中にも、そして主催者の私達の中にも、「言葉にできない、心にひっかかる何か」が残ったと思います。それはポジティブなものかもネガティブなのかもわからない。それをそこから、自分なりに意味付け、咀嚼していくのがこれからなのだと思います。それが1年後なのか、10年後なのか。思い返したとき、このインターンが皆さんにとって何らかの糧になっていればいいな、と思います」


最終発表で司会を務めた人事部の久保田氏。

インターンシップを終えて

 

最後まで「余白」を持つ形となったJTのインターンシップ。様々に合理化されたこの日本社会で、このようなインターンを開催するJTという会社の存在は、ひと際光る。

 

本インターンシップを主導したJT人事の一人は、こう語る。

 

「JTは、つまらない社会が来ないための、最初で最後の砦なんじゃないですかね。」

 

「インターンで伝えたかったこと。それは「自分がいない世界を考える」ってことの大切さ。今回はうちの会社を題材にやったけど、本当に考えなきゃいけないのは、君たちのことなんだよってこと。」

 

「これからの時代を生きる皆さんに、自分が生きている存在証明を、考えてほしい。今回のインターンが、この社会にとってそんな一石を投じるものであれば、幸いです。」

 

あなたの未来、JTの未来、たばこの未来、人類の未来。そういった「普段は想いを馳せないような対象」に思考と想いを巡らせる。それによって皆さんの人生が少しでも豊かになる。そんな「ひととき」を、この記事が生み出せたら、幸いです。


では、またお会いしましょう。

 

(文・喜多恒介、写真・喜多恒仁)

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  1. めちゃくちゃ好きだ!

    日本では、答えはないって言われるけど、
    多くの場で答えが求められる。

    日本の就活は言語化を強制するけど、言葉に出来ないものは、多くあると思うし、自分の人生を一言で表すなんてほぼ不可能。

    それでも採用の形は日本中ほとんど一緒で、同じような事を聞かれ、同じような事を話し、肯定、否定をされる。

    このインターンは、心の底から答えのない問いに対して向き合える幸せなインターンだったと思う。

    是非、参加したかった。

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